大切な家族である愛犬が下痢をすると、飼い主は心配になります。犬の下痢は、食事の変更やストレスなど、さまざまな要因で引き起こされます。症状の程度や持続期間によって対処法が異なるため、正しい知識を持つことは大切です。
この記事では、犬の下痢の原因や注意点、予防法を詳しく解説します。記事を読めば、愛犬の下痢に対して適切な対応ができ、健康管理に役立ちます。
犬が下痢をする原因

犬が下痢をする主な原因は、以下のとおりです。
- 食べ物の変更や不適切な食事
- ストレスや環境の変化
- 誤飲(異物の摂取)
食べ物の変更や不適切な食事
急な食事の変更は、犬の消化器系に負担をかけ、下痢を引き起こす可能性があります。以下のような不適切な食事も、下痢の原因となり得る要素です。
- 高脂肪な食品
- 乳製品の過剰摂取
- 腐った食べ物や生肉の摂取
- アレルギー反応を引き起こす食材の摂取
- 添加物や保存料の多い食品
- おやつやご褒美の過剰摂取
- 人間の食べ物の過剰摂取
- 水質の悪い飲み水
- 食物繊維の過剰摂取
適切でない温度の食べ物も、犬の消化器系に負担をかけ、下痢を引き起こす恐れがあります。犬に適した安全な食材を適量与え、急な食事の変更は避けることが大切です。
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ストレスや環境の変化

犬は敏感な動物のため、環境の変化に大きく影響を受けます。以下の環境の変化は、犬の心理的な不安や緊張を引き起こし、消化器系に影響を与えることがあります。
- 引っ越しや旅行
- 飼い主の長期不在
- 新しい家族やペットの増加
- 騒音や工事などの外部刺激
- 日常のルーティンの変更
分離不安や過度の興奮、恐怖などの感情的なストレスは、腸の動きを乱し、下痢を起こす要因です。犬は適切な社会化が必要であり、人間や他の犬との交流経験が不足すると、新しい環境に適応できずストレスを感じます。
犬は飼い主の感情を敏感に感じ取るため、飼い主の不安や緊張状態に反応して、ストレスを感じる場合もあります。
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誤飲(異物の摂取)
誤飲とは、食べ物ではないものを飲み込んでしまうことです。プラスチックや小石、おもちゃの一部などを誤飲してしまうケースが多くあります。誤飲は消化器系の問題を引き起こす主な原因の一つです。異物を飲み込むと、腸閉塞や消化管の損傷が起こる可能性があります。
誤飲が引き起こす症状には、嘔吐や腹痛、下痢などがあります。誤飲の疑いがある場合は、速やかに獣医の診断を受けてください。誤飲の予防には、危険物は犬が触れられない場所に保管し、安全なおもちゃを選んで与えることが大切です。
散歩中には愛犬の様子をよく見守り、路上に落ちている物を拾い食いしないよう注意しましょう。ラブラドールレトリバーなど誤飲のリスクが高い犬種を飼っている場合は、より一層の注意が必要です。誤飲防止のためのトレーニングを行うことも効果的な対策です。
犬の下痢の種類

犬の下痢の種類を見わけるために、下痢の種類と違いを解説します。
- 急性下痢と慢性下痢
- 小腸性下痢と大腸性下痢
- 軽度の下痢と重度の下痢
急性下痢と慢性下痢
急性下痢は突然始まり、通常数日で回復しますが、慢性下痢は2〜3週間以上続きます。急性下痢の主な原因は、食事の変更やストレス、感染症などです。慢性下痢は、炎症性腸疾患や食物アレルギー、腫瘍などが原因で起こります。
両タイプの下痢に共通するのは、十分に水分補給して脱水を避ける必要がある点です。急性下痢は多くの場合自然に回復するため、短期的な食事制限を行い、消化しやすい食べ物を与えて対処できます。
慢性下痢の場合は、獣医の診断を受けて原因を見極めましょう。血便や嘔吐を伴う場合は、急性・慢性に関わらず、すぐに獣医へ連れて行ってください。
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小腸性下痢と大腸性下痢

小腸性下痢と大腸性下痢の特徴には、以下の違いがあります。
症状名 | 小腸性下痢 | 大腸性下痢 |
便の状態 | 水様便 | 粘液や血液を含む便 |
便の頻度 | 1日に数回大量の便が出る | 少量の便が頻繁に出る |
併発する症状 | 消化不良や栄養吸収障害により体重が減少 | 腹痛、排便時の痛み |
原因 | 食中毒やウイルス感染、寄生虫 | 炎症性腸疾患やストレス、食物アレルギー |
リスク | 脱水 | 大腸の炎症や潰瘍 |
治療方法 | 消化酵素サプリメント | 食物繊維の調整 |
小腸性下痢と大腸性下痢では、治療方法が異なるため、適切な見極めが大切です。
軽度の下痢と重度の下痢
軽度の下痢とは、便が柔らかくなり、排便の回数も少し増える程度の状態です。多くの場合自然に回復するため、様子を見て問題ありません。消化しやすい食事を与えたり、食事制限をしたりして症状を改善できます。重度の下痢は水様便や液状便で、排便の回数が著しく増加する特徴があります。
脱水により体重の5%以上の水分を失ったり、電解質のバランスが乱れたりすると危険なため、早急に獣医の診断を受けましょう。軽度の下痢であっても注意深く観察し、重度の下痢に進行しないよう注意が必要です。軽度・重度に関わらず、血便や黒色便が見られた場合は、すぐに獣医に相談してください。
犬が下痢をしているときの注意点

犬が下痢をしているときの注意点は、以下のとおりです。
- 血便の有無
- 下痢の持続時間
- 嘔吐や発熱の有無
血便の有無
血便は犬の健康状態に深刻な問題があることを示すサインです。鮮血や暗赤色の血液が混じった便を見つけたら、すぐに獣医に相談しましょう。血便の原因には、以下が挙げられます。
- パルボウイルス感染症
- 寄生虫感染
- 腸の炎症や潰瘍
- 重度の下痢による腸の損傷
血便は脱水や貧血のリスクがあり、犬の体に大きな負担をかけるため早急な対応が必要です。病院では血液検査や便検査などを行い、原因の特定が可能です。
治療法は、原因に応じて食事制限や薬物療法などを行います。血便は犬の命に関わる可能性がある症状のため、普段から便の状態をよく観察し、少しでも異変を感じたら迅速に対応しましょう。
下痢の持続時間

24時間以上続く下痢は要注意です。脱水症状のリスクが高まり、体重減少や食欲不振につながる場合もあります。慢性的な下痢は、潜在的な健康問題の兆候の一つです。
慢性的な下痢によって、栄養不足になったり、腸内細菌のバランスが崩れて免疫が弱まったりするリスクもあります。下痢が長く続く場合は、原因を特定するために獣医の診断と検査を受けましょう。
嘔吐や発熱の有無
下痢とともに嘔吐や発熱がある場合は、すぐに獣医の診断を受けてください。感染症や炎症性疾患などの可能性もあるため、自己判断での対処は禁物です。獣医に相談する際は、症状の持続時間や頻度、犬の様子などをできるだけ詳しく伝えましょう。
犬が下痢をしたときの食事管理

犬が下痢をしたときは、初期段階では12〜24時間絶食することが効果的です。絶食中も欠かさず水分補給しましょう。絶食を終えたら、消化しやすい食材を少量ずつ頻繁に与えます。おすすめの食材は、以下のとおりです。
- 茹でた白身魚
- 茹でた鶏むね肉
- おかゆ
- 蒸したサツマイモ
- 低脂肪のプレーンヨーグルト
- 茹でたニンジンやカボチャ
白身魚や鶏むね肉は低脂肪で良質なタンパク源です。おかゆは消化が早いため、胃腸を休ませる効果があります。ニンジンやカボチャは食物繊維が豊富であり、腸内環境を整える効果があります。
急な食事の変更は、胃腸に負担を与え逆効果となるため注意してください。新しい食材を与える際は少量から始め、様子を見ながら徐々に量を増やしていきましょう。
» 犬の健康的な食事とは?おすすめの食材やポイントを解説
犬の下痢を予防するためのポイント

犬の下痢を予防するポイントとして、以下を紹介します。
- 定期的な健康チェック
- ストレス管理と環境の整備
定期的な健康チェック
健康チェックにより、早期に異常を発見し、適切な対処ができます。以下の項目を定期的にチェックしましょう。
- 体重
- 食欲や排泄の状態
- 被毛や皮膚の状態
- 歯や口腔内の状態
- 目や耳の状態
自宅でのチェックに加え、定期的に獣医による健康診断を受けることもおすすめです。ワクチン接種や駆虫薬の投与など、予防医療も忘れずに行ってください。
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ストレス管理と環境の整備
快適な生活空間を確保し、適度な運動と遊びの時間を設けることが犬のストレス管理のポイントです。静かで落ち着ける場所を用意し、犬が規則正しい生活リズムを維持できるよう見守りましょう。清潔な生活環境を保ち、季節に応じて温度管理も行ってください。
騒音や急激な変化を最小限に抑え、犬が十分に休息できるよう注意しましょう。定期的なグルーミングも、犬のストレス軽減と健康維持につながります。環境が変化する場合は、新しい環境に慣れるための時間や、社会化の機会を与えることも大切です。
犬の下痢に関するよくある質問

犬の下痢に関するよくある質問として、以下の点に回答します。
- 犬の下痢が続く場合の対応策はある?
- 季節や犬種によって下痢のリスクは変わる?
犬の下痢が続く場合の対応策はある?
犬の下痢が続く場合は、24時間程度の絶食を行い、消化器官を休ませましょう。絶食の間も水分補給は十分に行ってください。絶食後は、消化の良い食事から少しずつ与え始めます。
プロバイオティクスを与えるのも効果的です。自宅での対応で改善が見られない場合は、獣医に相談し、適切な治療を受ける必要があります。下痢の原因を特定し、再発を防ぐことも重要です。
季節や犬種によって下痢のリスクは変わる?
季節や犬種によって、犬の下痢のリスクは変化します。夏は食中毒による下痢、冬は寒さによるストレスで消化器系の不調が起こりやすいです。犬種による以下の特徴にも注意しましょう。
犬種 | 特徴 |
小型犬 | 消化器系が敏感である |
パグやブルドッグなどの短頭 | 呼吸器系の問題が消化器系に影響する |
長毛種 | 毛球症のリスクが高く消化器系のトラブルが起こりやすい |
ジャーマン・シェパード | 消化器系の問題を抱えやすい |
年齢も下痢のリスクに関係します。子犬や高齢犬は免疫系が弱いため、下痢のリスクが高い傾向が見られます。それぞれのリスクを踏まえた適切なケアをすることが大切です。
年齢や犬種別の下痢の傾向

年齢や県種別によっても下痢の傾向は異なります。以下で良く見られる傾向を解説します。
- 子犬(0〜1歳)
- 成犬(1〜7歳)
- 高齢犬(7歳以上)
- 小型犬
- 短頭種
- 中型犬や大型犬
子犬(0〜1歳)
子犬は免疫力が未熟で、消化器系も発達途上です。新しい食材に対する耐性が低く、突然の変化が消化不良や下痢を引き起こすこともあります。寄生虫やパルボウイルスなどのウイルス感染による下痢も起こりやすい傾向があります。
子犬は下痢による脱水や栄養不足の影響を成犬よりも受けやすいため、症状が軽度でも迅速な対応が必要です。予防としては、定期的なワクチン接種や寄生虫駆除、消化に優しい食事が大切です。下痢が長引く場合や血便が見られる場合は、直ちに獣医に相談してください。
成犬(1〜7歳)

成犬は健康状態が安定しているため、下痢の頻度は比較的少ない傾向があります。成犬でも誤飲や急激な食事の変更、ストレスが原因で一時的に下痢を起こすことはあります。脂肪分の高い食事や人間の食べ物を与えることが下痢の原因となる場合があるため、食事の内容には気を配りましょう。
成犬の場合、急性の下痢は適切な管理で回復しますが、慢性的な下痢は以下の病気の兆候の可能性があるため、注意が必要です。
- 食物アレルギー
- 炎症性腸疾患
- 消化器系の疾患や感染症
慢性的な下痢が続く場合は、獣医の診断を受け、適切な治療を行いましょう。
高齢犬(7歳以上)
高齢犬は消化機能が低下し、腸内環境のバランスが乱れやすいため、下痢のリスクが高まります。膵炎や腎臓病などの基礎疾患が下痢を引き起こす可能性があります。高齢犬は体力の回復が遅いため、下痢が続くと体重減少や免疫力低下の原因となり危険です。
高齢犬の食事管理は、消化しやすい低脂肪の食事や腸内細菌をサポートするプロバイオティクスの利用がおすすめです。定期的な健康診断も、早期に異常を発見し、適切な治療を行うのに役立ちます。
小型犬

小型犬は消化器系が敏感です。食事や環境の変化に影響を受けやすい傾向があります。チワワやポメラニアンなどは、少量の食事でも栄養過多による下痢を引き起こすことがあります。小型犬は低血糖になりやすく、下痢と同時にエネルギー不足に陥る危険性にも注意が必要です。
小型犬には量と栄養バランスが適切に調整された食事を与えることが重要です。定期的に体調を観察し、下痢が続く場合は早めに獣医の診断を受けるようにしましょう。
» 小型犬の寿命とケアの方法
短頭種
フレンチブルドッグやパグなどの短頭種は消化器系が弱く、ストレスや興奮が腸の動きを乱すことがあります。短頭種特有の呼吸器の問題が全身の代謝に影響を与え、下痢を引き起こす場合もあります。
短頭種の健康を守るには、消化に良い食事を選び、環境によるストレスの減少が大切です。す。散歩や遊びの後は、十分な休息を取らせて身体への負担を減らしましょう。
中型犬や大型犬

中型犬や大型犬の犬種には、ラブラドールレトリバーやジャーマンシェパードなどが挙げられます。活動的で好奇心が旺盛なため、誤飲や拾い食いによる下痢をしやすいのが特徴です。大型犬特有の病気である胃拡張や腸捻転が下痢を伴うこともあります。
中型犬や大型犬は食後に激しい運動を避け、誤飲を防ぐための環境作りが大切です。栄養価が高くバランスの取れた食事で、胃腸への負担を減らす工夫も行いましょう。年齢や犬種ごとの特性を理解し、適切な予防とケアを行うと、愛犬の下痢を防ぎ、健康を守れます。
まとめ

犬の下痢の原因は主に、食事の変更やストレス、誤飲などが挙げられます。下痢の種類や程度によって適切な対処法は異なるため、正しく見極め、適切な対処が重要です。血便が出る場合や症状が持続する場合は、特に注意しましょう。
下痢の予防には、消化の良い食事や定期的な健康チェック、ストレス管理が効果的です。症状が改善しない場合は、早めに獣医の診断を受けてください。犬種や季節によっても下痢のリスクが変わるため、愛犬の特性を理解し、適切なケアを心がけましょう。