犬が草を食べる姿を見て、心配になる人は多くいます。この記事では、犬が草を食べる理由やリスク、適切な対処法を詳しく解説します。記事を読めば、犬が草を食べる行動の背景への理解や、適切な対応が可能です。
犬が草を食べる行動のほとんどは自然な行動ですが、リスクを伴う場合もあるため注意が必要です。行動の本質を理解したうえで適切に対処し、犬の健康と安全を守りましょう。
犬が草を食べる理由

犬が草を食べる理由は以下のとおりです。
- 消化を助ける
- 栄養不足を補う
- ストレスや不安を発散させる
- 草の味が好きで食べる
- 行動の癖や好奇心で食べる
犬が草を食べる行動は、野生の祖先から受け継いだ本能的な行動と考えられています。ただし、過度な草食いは健康問題を引き起こす可能性があるため、適切な観察と対処が重要です。
消化を助ける
草に含まれる食物繊維は、犬の消化システムを刺激するため、腸の動きの活性化や便秘の解消に効果的です。胃酸の中和にもつながります。胃の不快感がある場合は、草を食べて嘔吐を誘発し、不快感を解消しようとします。消化酵素を含む草を摂取すると、消化の促進に効果的です。
栄養不足を補う

犬の食事に葉物野菜が不足している場合、草を食べる場合があります。草には、犬の体が必要とする酵素やビタミン、ミネラル、食物繊維が含まれているためです。栄養バランスの取れた食事を与えると、草を食べる行動を減らせます。
ストレスや不安を発散させる
犬は精神的なバランスを取り戻すために、以下の状況で草を食べる傾向があります。
- 環境の変化に適応したいとき
- 退屈な孤独感があるとき
- 飼い主の注目を集めたいとき
草を食べる行為は自分を安心させる行動の一種です。一時的に気分転換やリラックス効果も得られることもあります。
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草の味が好きで食べる

個性や嗜好によって異なりますが、新鮮な草の香りや味が好きな犬もいます。特に若い犬や好奇心旺盛な犬に多く見られるのが特徴です。草を噛む感触を楽しんでいる可能性もあります。
草を食べて、口の中をさっぱりさせたい場合もあります。飼い主が与える食事に飽きた際の気分転換も理由の一つです。
行動の癖や好奇心で食べる
犬は、以下の行動の癖や好奇心で草を食べる場合もあります。
- 本能的な探索行動の一環
- 新しい環境や刺激への好奇心
- 飼い主の注目を引くための行動
- 退屈や運動不足の解消
- 子犬の時期に身に付けた習慣
- 他の犬の行動の模倣
- 遊び感覚でのちぎり食い
- 特定の草の香りや触感への興味
自然な探索本能や好奇心の表れである場合が多い傾向です。ただし、過度に草を食べる行動が続く場合は、他の理由がある可能性もあるため注意が必要です。犬が草を食べる行動を完全に止めることは難しいかもしれませんが、適切な運動や刺激を与えると減らせる可能性があります。
安全な場所で犬が自由に探索できる時間を設けるのも効果的です。犬の好奇心を満たしつつ、過度の草食いを防ぎましょう。
犬が草を食べるリスク

犬が草を食べるリスクは以下のとおりです。
- 消化不良や体調不良を引き起こす
- 毒性を持つ植物を食べる
- 寄生虫や病原体に感染する
- 化学物質や除草剤を摂取する
消化不良や体調不良を引き起こす
犬が草を食べると、胃腸への負担が大きくなり、嘔吐や下痢を引き起こすリスクがあります。腸内細菌のバランスが乱れ、腹痛や腹部膨満感といった不快な症状も懸念されます。消化不良が原因で栄養吸収が低下し、食欲不振や体重減少につながることも懸念点です。
草の種類によってはアレルギー反応を引き起こすため注意が必要です。草に含まれる繊維質が消化されずに腸に詰まり、腸閉塞を起こすリスクもあります。緊急の治療が必要になる場合もあるため注意が必要です。歯が傷つく可能性もあり、口腔内の健康にも悪影響を及ぼすおそれがあります。
毒性を持つ植物を食べる
一般的な観葉植物や庭木、野草には、犬にとって有毒なものが含まれています。危険な植物はユリやアザレア、キョウチクトウです。誤って食べてしまうと、嘔吐や下痢、痙攣といった中毒症状を引き起こす可能性があります。重度の場合、臓器不全や死亡につながる場合もあるため注意が必要です。
散歩中や庭で見知らぬ植物を食べてしまわないよう気をつけましょう。季節によって異なる有毒植物が出現するので、年間を通して注意が必要になります。植物の種類によって毒性の強さが異なり、犬の体格や摂取量によっても症状の程度が変わります。有毒植物に関する知識を持つことが大切です。
犬の安全を守るために身近な植物の毒性について学び、危険な植物を犬から遠ざけるよう心がけてください。
寄生虫や病原体に感染する

草には以下の寄生虫や病原体が潜んでいる可能性があるため、注意が必要です。
- 回虫、鉤虫、条虫
- サルモネラ、大腸菌
- パルボウイルス
- ジアルジア
寄生虫や病原体に感染すると、下痢や嘔吐といった消化器系の問題が起こる場合があります。発熱や倦怠感などの全身症状が現れるケースもあります。慢性的な健康問題につながる可能性もあるため注意してください。特に免疫力の低下した犬は重症化するリスクが高くなります。
人獣共通感染症の場合は、飼い主にも感染する危険性があります。
化学物質や除草剤を摂取する
化学物質や除草剤は、犬の体内に蓄積されて以下の健康問題を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。
- 急性中毒症状
- 長期的な健康問題
- 免疫系や内分泌系への影響
- 皮膚炎や呼吸器系の問題
- 消化器系へのダメージ
除草剤に含まれるグリホサートなどの物質は発がん性の可能性が指摘されています。農薬や肥料の残留物も犬の健康に悪影響を及ぼす恐れがあります。環境ホルモン物質による生殖系への悪影響も不安材料です。
芝生や植物に使用される殺菌剤による中毒のリスクもあるため、散歩の際は注意が必要です。リスクを避けるために、犬が草を食べないよう監視し、安全な環境で散歩させましょう。異常な症状が見られた場合は、すぐに獣医師に相談してください。
犬が草を食べたときの対処法

犬が草を食べたときは、落ち着いて状況を把握し、以下の対応をとることが大切です。
- 症状に合わせて応急処置をする
- 様子を観察する
- 必要に応じて動物病院へ連れていく
症状に合わせて応急処置をする
症状に合わせて適切な応急処置を行うと、犬の健康状態を素早く改善し、深刻な事態を防げます。代表的な症状に対する対処法を以下にまとめます。
- 嘔吐や下痢の場合
- 水分補給を心がけてください。
- 呼吸困難や痙攣がある場合
- すぐに獣医師に相談しましょう。
- 口腔内に異物がある場合
- 無理に取り出さず専門家に任せるのがおすすめです。
- 皮膚に異常がある場合
- 清潔な水で洗い流すのが効果的です。
- 食欲不振が続く場合
- 食事内容を見直し、様子を観察しましょう。
様子を観察する

犬が草を食べた後は、慎重に様子を観察することが大切です。24時間程度、継続的に犬の行動や様子を確認してください。普段と変わらない行動をしているか確認し、元気がなかったり、食欲が落ちたりしていないかも観察しましょう。
消化器系の症状にも注目します。嘔吐や下痢などの異常がないか確認しましょう。排泄物に注意し、草を食べた後の便に異常がないか確かめてください。呼吸や体温の変化にも気をつけましょう。普段と違う呼吸の仕方や、体温の上昇・下降が見られないかチェックします。以下の症状が現れた場合は要注意です。
- 嘔吐
- 血便
- 激しい腹痛
- ぐったりした状態
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必要に応じて動物病院へ連れていく
犬の健康状態に異変を感じたら、すぐに動物病院を受診しましょう。以下の症状が見られる場合は、獣医師の診察を受けるのがおすすめです。
- 嘔吐や下痢
- 食欲不振や元気のなさ
- 血便や黒い便
- 呼吸困難や痙攣
- 大量の草を食べた可能性
血便や呼吸困難、痙攣などの重篤な症状が見られた場合は、緊急性が高いのですぐに受診しましょう。有毒植物を食べた可能性がある場合も、直ちに動物病院へ連れて行く必要があります。普段と様子が明らかに違う場合も、念のため受診を検討してください。
少しでも気になる症状があれば、躊躇せずに動物病院を受診することが大切です。
犬が草を食べないようにする方法

犬が草を食べないようにする方法は以下のとおりです。
- 適切な栄養バランスの食事を与える
- 散歩中に監視する
- 食べられる草を用意する
複数の方法を組み合わせると、愛犬の健康と安全を守れます。
適切な栄養バランスの食事を与える
栄養バランスの取れた食事の提供で、犬が草を食べる行動を減らせます。タンパク質や炭水化物、脂肪、ビタミン、ミネラルのバランスが取れた高品質なドッグフードを選びましょう。犬の年齢や体格に合わせて適切な量を与えることも大切です。定期的に食事内容を見直してください。
犬の健康状態や活動量に合わせて、調整が必要になる場合があります。手作り食を与える場合は、栄養バランスに注意が必要です。獣医師や動物栄養の専門家に相談し、適切なレシピを作成しましょう。過剰なおやつは栄養バランスを崩す原因になるため。全体の食事量の10%以下に抑えてください。
水分補給は健康維持に欠かせないので、新鮮な水を常に用意しましょう。食事の時間を一定に保つと、犬の生活リズムを整えられます。食べ残しがある場合は量を調整し、適切な量を把握しましょう。新しい食事に切り替える際は、徐々に混ぜるなど、段階的に行ってください。
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散歩中に監視する

散歩中は犬が草を食べないよう注意深く監視すると、犬の健康を守り安全な散歩を楽しめます。常に犬の行動を注視し、リードを短めに持ってコントロールしやすくしましょう。犬が草に近づいたら、すぐに引き離し「ダメ」などの声かけで制止します。草を食べそうになったら、おもちゃやおやつで気をそらすのも効果的です。
散歩ルートの選び方や散歩後のケアも重要です。草の多い場所を避けて散歩ルートを選び、散歩後に犬の口の中を確認すると、効果的に草を食べる行動を防げます。犬の興味を引くような楽しい散歩を心がけましょう。犬が退屈せずに散歩を楽しめれば、草を食べる行動も減らせます。
口輪の使用も1つの方法としておすすめです。
食べられる草を用意する
室内で育てられる安全な草や野菜を用意すると、犬の健康をサポートできます。犬が食べられる草は以下のとおりです。
- ペットショップの犬用草
- 無農薬の小麦やオーツ麦の若葉
- キャットグラス・ドッググラス
- 安全なハーブ
水耕栽培で新鮮な草を育てるのも良い方法です。犬用の草マットを購入し、定期的に交換すると簡単に栽培できます。タンポポの葉など安全な野草を採取して与えられますが、農薬や化学物質の心配がない場所で採取するのが重要です。新鮮で安全な草を定期的に与えると、犬の自然な行動を満たし、健康維持にも役立ちます。
» 犬が食べてはいけないものは何?食べてしまったときの対処法と注意点
犬が草を食べる行動と年齢の関係

犬が草を食べる行動と年齢の関係について、以下の項目に分けて解説します。
- 子犬の場合
- 成犬の場合
- 高齢犬の場合
子犬の場合
子犬が草を食べる理由の多くは好奇心です。周囲の環境を探求しながら学習しており、何でも口に入れてみて新しい体験を得ようとします。草の食感や味が興味を引くため、遊び感覚で食べるのが一般的です。珍しい行動ではなく、通常は健康上の問題はありません。
ただし、子犬は免疫力が未発達であるため、草に付着した寄生虫や病原体による感染症のリスクがあります。毒性のある植物を誤って食べる可能性もあるため、飼い主は散歩中や庭での行動をしっかり監視する必要があります。
成犬の場合

成犬が草を食べる行動は、子犬に比べて目的が明確になるのが一般的です。消化不良を感じた際に草を食べて胃を刺激し、嘔吐を促し不快感を和らげようとします。食事に必要な栄養素が不足していると、本能的に補おうとして草を食べる場合もあります。ストレスや不安、退屈などの心理的要因も、草を食べる行動の原因です。
飼い主が忙しくて散歩の頻度が減ったり、遊び相手がいなくなったりすると、ストレスの原因となりがちです。運動や遊びの時間を増やすと、草を食べる頻度が減少する場合があります。
高齢犬の場合
高齢犬の場合、草を食べる行動には体調や加齢に伴う変化が影響しています。消化機能の低下や胃腸の慢性的な不調も原因の一つです。認知症の初期症状として、無意識に草を食べる行動が見られます。加齢によって食事の栄養バランスが崩れ、体が不足している栄養を補おうとする場合もあります。
頻繁に草を食べる場合は、体調の観察や食事内容の見直しが重要です。草を食べた後に嘔吐や下痢などの症状が見られる場合は、獣医師に相談しましょう。
まとめ

犬が草を食べる行動には、栄養不足や消化システムへの刺激などさまざまな理由があります。体調不良や寄生虫の感染など健康上のリスクもあるため注意が必要です。適切な食事管理や監視、安全な代替品の用意などを行いましょう。犬のライフステージに応じたケアを行い、行動の背景の理解が大切です。
適切な観察と対応で犬の健康を守りましょう。