大切な家族である愛犬が吐くと飼い主は心配です。多くの飼い主は、愛犬が吐いたときに獣医師に相談すべきなのか判断に迷います。この記事では、犬が吐く原因や考えられる病気、危険なサインと対処法、予防方法を紹介します。記事を読むと、適切な対処と予防法がわかり、愛犬が吐いたときにも適切な対応が可能です。
犬の吐き方や吐いたものの状態によっては、深刻な病気のサインの場合があります。適切な対処と予防法を覚え、愛犬の健康を守りましょう。
犬が吐く原因

犬が吐く原因は多様で、主に以下の4つに分類されます。
- 食べ過ぎや異物の誤飲
- 感染症や寄生虫
- 慢性疾患や急性疾患
- ストレスや環境の変化
犬が吐く原因がわかれば、愛犬の健康管理に役立ちます。適切な対処法を知り、深刻な症状への進行を防ぎましょう。
食べ過ぎや異物の誤飲
犬が吐く原因の一つは、食べ過ぎや異物の誤飲です。犬の胃は人間より小さいため、大量に食べたり急いで食べたりすると負担がかかり吐くことがあります。フードの急な変更も嘔吐を引き起こす原因です。過度の運動後に大量の水を飲むと胃拡張を起こし、嘔吐につながる場合があります。
異物の誤飲は、消化管の閉塞を引き起こす可能性があり危険です。腐った食べ物や毒性のある植物の摂取にも注意してください。食べ過ぎや異物の誤飲の予防には、飼い主の注意深い管理が必要です。食べ物や有害な物は犬が届かないところに置くなど、環境を整えましょう。
感染症や寄生虫
感染症や寄生虫は犬の消化器系に影響を与え、嘔吐だけでなく下痢や食欲不振などの原因になります。適切な治療をしなげれば重症化する可能性があり危険です。
以下の感染症や寄生虫は、嘔吐の原因になります。
- パルボウイルス感染症
- コロナウイルス感染症
- ジステンパー
- 回虫症
- 鉤虫症
- ジアルジア症
愛犬に嘔吐の症状が見られた場合は、早めに獣医師に相談しましょう。予防には定期的なワクチン接種や駆虫薬の投与が効果的です。清潔な生活環境を保つと、感染症や寄生虫による嘔吐のリスクを減らせます。
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慢性疾患や急性疾患

犬の嘔吐は慢性疾患や急性疾患が原因となることがあります。嘔吐の原因となる慢性疾患は以下のとおりです。
- 胃炎や胃潰瘍などの消化器系疾患
- 腎臓病や肝臓病、心臓病などの臓器疾患
- 膵炎
- クッシング症候群
- 甲状腺機能亢進症
急性の病気でも嘔吐する場合があるので、状態をよく観察してください。急性疾患には、胃捻転症候群や腸閉塞、急性膵炎、腹膜炎などが挙げられます。食べ物のアレルギーにも注意が必要です。慢性疾患や急性疾患による嘔吐は、適切な治療を受けると改善する可能性が高くなります。
犬の様子がいつもと違う場合や嘔吐が続く場合は、獣医師に相談しましょう。
ストレスや環境の変化
ストレスや環境の変化は、犬の吐き気を引き起こす原因の一つです。犬は人間以上に環境の変化に敏感なので、さまざまな要因がストレスとなり嘔吐につながります。
以下の状況は犬にストレスを与え、吐き気を誘発する可能性があります。
- 新しい環境への引っ越し
- 飼い主の長期不在
- 新しいペットの増加
- 騒音や強い臭いなどの外部刺激
- 日常のルーティンの変更
愛犬の様子をよく観察し、環境の変化による影響を最小限に抑えることが大切です。急激な変化は避け、徐々に新しい環境に慣れさせましょう。
【種類別】犬が吐いたものから考えられる病気

犬の嘔吐の内容物によって、考えられる病気や体調変化が異なります。愛犬の健康状態を把握するために、吐いたものの特徴を観察しましょう。以下の嘔吐物から考えられる病気について説明します。
- 黄色や緑の胆汁が混じった嘔吐
- 白い泡や透明な液体の嘔吐
- 血液が混じる嘔吐
- 異物が含まれる嘔吐
黄色や緑の胆汁が混じった嘔吐
黄色や緑の胆汁が混じった嘔吐は空腹時に多く見られる症状で、胃酸が胃を刺激するために起こる症状です。胆汁の逆流による嘔吐は、肝臓や胆のうの疾患や胃・十二指腸など消化器系の炎症や感染症、胃酸過多が原因と考えられます。症状が続く場合は、食事のタイミングや内容を見直しましょう。
食事回数を増やし、消化しやすい食事にすると改善する場合があります。慢性的に症状が続く場合は獣医師の診察が必要です。根本的な原因を特定し、適切な治療を受けることをおすすめします。食欲不振や下痢などの併発する症状にも注意しましょう。
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白い泡や透明な液体の嘔吐
白い泡や透明な液体の嘔吐は、空腹時に胃液が過剰に分泌されて引き起こされます。ストレスや不安による過度の唾液分泌が原因の場合もあります。嘔吐反射の前兆として見られることもあるため、必ずしも深刻な病気を示しているわけではありません。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍、膵炎や食道逆流症などの病気の可能性も考えられます。腎臓病や胆のう疾患の初期症状の場合があるため注意が必要です。症状が続くときは獣医師に相談しましょう。犬の様子をよく観察し、他の症状がないか確認してください。
血液が混じる嘔吐

血液が混じる嘔吐は消化管出血を示唆しており、迅速な対応が必要となるサインです。胃潰瘍や十二指腸潰瘍、消化管内の腫瘍、異物誤飲による消化管の損傷が考えられます。重度の寄生虫感染や血液凝固障害、急性膵炎、中毒、薬物の副作用なども疑えます。
血液が混じる嘔吐を発見した場合、緊急性が高いため、すぐに獣医師の診察を受けましょう。診察までの間、出血量と嘔吐の頻度、他の症状の有無に注意して観察してください。獣医師の適切な診断と治療に役立ちます。血液が混じる嘔吐は犬の命に関わる可能性があるので、決して軽視せず、迅速な対応を心がけましょう。
異物が含まれる嘔吐
異物が含まれる嘔吐は、犬の健康に深刻な影響を与える可能性があります。消化できない異物(おもちゃや小石、骨など)が嘔吐物に混じっている場合、異物誤飲の可能性が高い傾向です。異物の誤飲は腸閉塞のリスクがあります。異物の形状によっては、食道や胃に傷をつける可能性もあり危険です。
異物が小さくても複数個ある場合は危険度が高くなります。緊急手術が必要になる場合もあるため、異物が見つかった場合は、速やかに獣医師に相談しましょう。
犬が吐く危険なサインと対処法

犬が吐いてしまう危険なサインと対処法を、以下で解説します。
- 繰り返し嘔吐が起こる
- 嘔吐と同時に下痢や血便がある
- 嘔吐後にぐったりする
- 嘔吐と同時に食欲不振が見られる
適切な対処のために、嘔吐物や便の状態、頻度などの情報を記録しておきましょう。
繰り返し嘔吐が起こる
繰り返し嘔吐が起こる場合、以下のサインの可能性があります。
- 脱水症状のリスク
- 体力の消耗
- 電解質バランスの乱れ
24時間以内に2回以上の嘔吐が見られたら、自宅での経過観察は避け、速やかに獣医師の診察を受けましょう。嘔吐物の内容や嘔吐の頻度を観察し、伝えてください。獣医師の適切な診断と治療により、犬の健康を守れます。
嘔吐と同時に下痢や血便がある
嘔吐と下痢や血便が同時に起こる場合、すぐに獣医師の診察を受けてください。腸管出血や重度の消化器系疾患の可能性を示しています。パルボウイルス感染症の典型的な症状でもあるため、様子をよく観察しましょう。嘔吐と下痢や血便が同時に起こる状態では、脱水になりやすいため注意が必要です。
症状が起こる原因としては感染症や寄生虫、異物の誤飲や中毒が考えられます。獣医師の診察を受ける際には、症状の継続時間や頻度、様子などをできるだけ詳しく伝えることが大切です。自己判断での投薬は避け、必ず獣医師の指示に従ってください。回復するまでは、消化に優しい食事と十分な水分補給が必要です。
嘔吐後にぐったりする

嘔吐後にぐったりする場合は、脱水や電解質バランスの乱れを引き起こす危険があります。食欲不振ではないか観察してください。嘔吐物に血液や異物が混じっていないかを確認することも重要です。嘔吐物に血液や異物が混じっている場合、自宅での経過観察は危険です。すぐに獣医師の診察を受けてください。
獣医師は状況に応じて、輸液療法や薬物療法、原因特定のための検査などを行います。獣医師の指示に従い、愛犬を安静にさせ、適切な食事管理などで回復をサポートしましょう。適切なケアと注意深い観察が、愛犬の早期回復につながります。
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嘔吐と同時に食欲不振が見られる
嘔吐と食欲不振が同時に見られる場合、一時的な不調ではなく、重大な病気の可能性を示しています。食べ物を受け付けないうえに、体内の水分や栄養も失われるので、脱水や栄養失調のリスクが高まり危険です。症状が続く場合は、急性の消化器系疾患や慢性疾患の悪化、感染症や中毒が疑われます。
症状が24時間以上続く場合は、獣医師の診察を受けてください。血液検査や画像診断を行い、原因を特定して治療する必要があります。応急処置として水分補給と電解質バランスの回復が大切です。自己判断での処置は避け、必ず専門家の指示に従いましょう。
犬が吐く病気と治療法

犬が吐く病気は以下の3つに分類されます。
- 消化器系の病気
- 内分泌系の病気
- 神経系の病気
それぞれの病気に適した治療法があるため、早期発見・早期治療が重要です。
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消化器系の病気
代表的な消化器系の病気は、以下のとおりです。
- 胃炎:胃の粘膜が炎症を起こす病気
- 腸炎:腸の粘膜が炎症を起こす病気
- 膵炎:膵臓が炎症を起こす病気
- 胃拡張捻転症候群:胃が膨らんでねじれてしまう病気
- 異物誤飲:おもちゃや小物などを誤って飲み込むことによるトラブル
消化器系の病気は、適切な治療を行わなければ重症化する可能性があります。症状が続く場合は、獣医師に相談しましょう。予防には、適切な食事管理や定期的な健康チェックが効果的です。
内分泌系の病気

内分泌系の病気が犬の嘔吐の原因となる場合があります。ホルモンの分泌異常が体のバランスを崩し、消化器系に影響を与えるためです。代表的な内分泌系の病気は以下のとおりです。
- 甲状腺機能亢進症
- 副腎皮質機能亢進症
- 副腎皮質機能低下症
- 糖尿病
- 下垂体機能障害
ホルモンバランスの乱れにより、嘔吐や食欲不振などの症状を引き起こします。甲状腺機能亢進症では甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、代謝が高まり嘔吐が起こります。内分泌系の病気は複雑で、症状もさまざまです。早期発見と投薬などの治療により、多くの場合はコントロールが可能です。
神経系の病気
神経系の病気は脳や脊髄、神経系に影響を与え、嘔吐の原因になります。てんかんは、発作や意識障害を引き起こし、嘔吐する場合があります。脳炎は脳の炎症により、嘔吐や行動の変化が見られるのが特徴です。脳腫瘍の場合は、頭蓋内圧の上昇によって嘔吐や他の神経症状が現れます。
前庭疾患はめまいや平衡感覚の喪失を引き起こし、嘔吐が起こります。脊髄疾患は神経の圧迫により嘔吐や運動障害が見られるのが特徴です。神経系の病気は嘔吐以外にも、さまざまな症状を伴う場合があります。異常な行動や症状が見られる場合は、注意深く観察し、獣医師に相談しましょう。
犬が吐くのを予防する方法

犬の嘔吐を予防するには、日常的な対策が大切です。以下の3つの観点からケアすることをおすすめします。
- 食事管理
- ストレス管理
- 定期的な健康診断
食事管理
バランスの取れた栄養摂取と規則正しい食事習慣が、愛犬の健康的な生活には大切です。年齢や体格、活動量に合わせて1日の食事量を決め、決まった時間に与えましょう。急な食事内容の変更は消化器系に負担をかけるので避けてください。添加物が少なく、犬の消化に適した原材料を使用したドッグフードを選びましょう。
十分な水分補給も必要です。おやつは適量を守って与えましょう。人間の食べ物は消化が難しかったり、犬に有害な成分が含まれていたりするため控えてください。食べ物のアレルギーにも注意が必要です。新しい食材を与える際は少量から始め、様子を見ながら徐々に増やしましょう。
食後の激しい運動は避け、食事の温度にも気を付けましょう。腐った食べ物は絶対に与えないでください。特別なダイエットが必要な場合や食事に関して不安がある場合は、獣医師に相談することをおすすめします。専門家のアドバイスを受けると、より適切な食事管理が可能です。
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ストレス管理

適切なストレス管理により、吐き気や嘔吐のリスクを軽減できます。犬のストレスを軽減するための効果的な方法は以下のとおりです。
- 快適な生活環境を整える
- 適度な運動と遊びの時間を確保する
- 規則正しい生活リズムを維持する
- 飼い主との信頼関係を築く
急激な環境の変化は犬のストレス要因になるため、ゆっくりと時間をかけて適応させることが大切です。他のペットや人との交流を増やすことも、ストレス軽減に役立ちます。適切な社会化により、犬はさまざまな状況に対して落ち着いて対応できるようになります。愛犬のストレスのサインを見逃さないことも大切です。
不安そうな様子を見せたり、普段と異なる行動をとったりする場合は、ストレスを感じている可能性があります。おもちゃなど、リラックスできるアイテムを活用するのは良い方法です。愛犬の個性や性格に合わせたケアを行い、定期的なグルーミングでスキンシップを図り、ストレスを管理しましょう。
» 見逃さないで!犬がストレスを感じる原因とサインを解説
定期的な健康診断
定期的な健康診断は、愛犬の健康を維持するために欠かせません。健康診断には、以下の項目が含まれます。
- 血液検査
- 尿検査
- 糞便検査
- 体重測定
- 歯科検診
- 予防接種
- 寄生虫検査
獣医師による心臓や肺の聴診や皮膚と被毛の状態確認、目や耳の検査も実施します。関節や筋肉の状態チェックと腫瘍や異常成長のスクリーニングも重要な項目です。健康診断は、年に1回以上の受診をおすすめします。高齢犬の場合は、より頻繁な検診が必要です。
定期的な健康診断の受診は、病気の早期発見・早期治療につながり、愛犬の健康管理に役立ちます。
» 犬の健康診断の重要性と検査内容を解説
まとめ

犬が吐いたときに適切な対処をするために、吐いたものの種類や嘔吐の頻度、他の症状の有無などを落ち着いて観察しましょう。軽度の場合は様子を見ることもできますが、繰り返し吐く場合や他の症状がある場合は、すぐに獣医師に相談してください。早めの対応が愛犬の健康を守ります。
日頃から食事管理やストレス管理に気を配り、定期的な健康診断を受けると、嘔吐の原因を予防できます。愛犬との楽しい時間を過ごすためにも、日常的に健康管理をしましょう。
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